マードックについて(続々編)

    まず、昨日の分の補足を。


 Piu MossoのShips Bellについてですが、氷山発見後見張り員が鐘を鳴らした、という記録があります。ので、やはり昨日の解釈で妥当かなーと(それだけです)。



 正直なところ、ここからの荒れる場面は物凄く好きというわけではないので、ちょっと適当になったらごめんなさい。



 ・I、J
 ここでは、もうタイタニックは氷山にぶつかってしまっています。どこでぶつかったか、というとよく分かりませんが、強いて言うならIのところのダブルバーの瞬間かな。

 で、直管の旋律はけっこう力強いです。タイタニックは世界最大の客船であり、沈没するということは当時考えられませんでした。ですから、危機感は感じ取れるものの、焦燥感とか、そういうものはあまり感じませんね。直管に割り振られていることからも、力強さを出すところです。

 また、映画にも描かれていますが、沈没する直前まで、事故に関して楽観的な乗客も多数いました。それほどにタイタニックの沈没はありえないことだと思われていたのでしょうが、これが、87小節目からのメロディーではないでしょうか。楽観的な気持ちと不安がないまぜになったような感じです。

 Jでは、層も増し、その感じが強まります。


 ・K

 Kでは、少しテンポが落ち、勢いは落ちたように思います。というか、IやJではある目的地に向かって驀進する巨軀の姿が見えますが、ここでは、目的地に向かって進むというより、あたふたしている感じがします。

 木管の連符は、直感的には海を表しているように思います。乗客が焦っている様子にも見えます。マードックら乗員が、救命ボートに乗客を乗せるのを急いでいるようにも聴こえます。とにかく、いろいろなものが入り乱れているようです(これ!といういい着想はありませんが)。そして、105小節目にある金管木管低音の動きは、漠然とですが、「沈没」とか、その恐怖みたいなものかなと思います。


 ・L

 難しいですね。いろいろな楽器が吹いていたのですが、ここではほぼ1つ(Bodhran Solo)です。たくさん人がいる中でクローズアップされるべき人。この作品ではマードックをおいて他にいないでしょう。

 彼が何を思っているのか分かりませんが、史実にあるのは、彼が最後まで勇敢に乗客の救助に当たったということ。この4小節の中でも、少し変化を感じます。つまり、大まかに見れば、前の2小節よりも後の2小節の方が、力強さや決意を感じます。具体的に譜面で見ると、アクセントが強拍にきていること、アクセントの音の多さ、B.D.のリズムなどからみてとれるのではないでしょうか。特に最後は、彼の決意を感じます。


 ・M

 Mでは場面が戻りますが、完全に同じわけではなく、Hrn.,Sax.の上行音型が焦燥感、また避けられない船の運命を感じさせます。そしてAccel.によりそれは加速していき、5度(4度)のTuttiで。

 何回も映画の話になってしまい申し訳ないのですが、映画では、船が真っ二つに折れてしまいます。そして、船首と船尾をそれぞれ上にして、沈んでいってしまうのです。このTuttiはまさにその場面ではないでしょうか。少し想像してみてください。主人公は船尾にいます。船が折れ、だんだんと船尾を持ち上げるようにして船は傾いていきます。そして、船尾が最高点に達してから、沈み始めるまで、奇妙に安定する一瞬がありますよね。119小節目と120小節目の間の小節線(Tuttiが終わった瞬間)がそこかなーと思います(伝わってるでしょうか笑)。そうなると、TuttiまでのAccel.は、だんだん船が傾いているようにも聴こえます。

 そして、Kで言及した「沈没」のテーマが戻ってきます。そして最後はそのTuttiですね。船は沈没してしまいます。


 ・N

 ここも難しい場面ですが、既に船が沈んだのは明らかです。では、沈没後、人々が漂流している様子なのでしょうか。

 自分は絶対に違うと思っています。これはマードックの物語であり(途中映画を着想に使いましたが、あくまでアイデアとしてです)、そしてそのマードックは沈没した船と運命を共にしています。先ほど、Mで船が沈没したと書きましたが、更に言えばマードックが死んだのです。となると、ここはどんな場面なのでしょう。

 またまた先取りしてしまう形になりますが、Oからは、死んだマードックが天国でゆっくり温かく迎え入れられる場面だと思っています。Mではマードックが死に、Oでは天国へ。ということは、その中間のNは、マードック(の意識)が、自らの肉体の死に気づいた、そんな場面ではないでしょうか。自分は死んでしまったのか。そんな、声にならないつぶやきが聞こえるような気がします(ちょっと言いすぎかな?でも独白という感じがめっちゃします)。



 さて、今日はここまでです。読んでくださってありがとうございます。おそらく明日完結です。